1月上旬の閑話


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1月4日(水)愚痴初め

明けましておめでとうございます。今日から「閑話」を再開しますので今年もお付き合いいただければ幸いです。さて今年はどんな年になるのでしょう。国の内外を問わず平穏な一年であってほしいものです。とは言っても愚かな人間は、いがみ合って殺し合いを続けるに違いないし、自然災害も起こるだろうから、今年が去年より良い方向に向かう保証はどこにもない。

シリアでの戦闘はやまず、トルコのイスタンブールでは過激グループの自爆テロで多くの犠牲者が出た。北朝鮮は核開発やミサイル発射の止める兆しはないし、韓国は韓国で朴大統領が死に体で政治空白状態である。中国はロシアからお下がりの中古空母を中心に太平洋に出て大規模な演習を始め海洋進出を目指している。アメリカのトランプ新大統領がどんな政策を打つ出すのかも注目される。言うことが勇ましいだけに、今後日本にどんな影響が出てくるのか気がかりである。

国内では安倍政権が自民党の絶対多数の上に胡坐をかいてしたい放題。拉致被害家族の切実な願いには耳を傾けるふりはしても実際に動く気配はない。年金財政の将来が心配だからと年金削りを目論んでいる。経済政策はうまく行っていると自画自賛しているが、景気が上向きだと実感しているのは一部の大企業だけで中小議業は置き去りにされている。野党陣営はそのような自民党の横暴を攻撃はしても、実際は指をくわえて眺めているだけで、待ったをかける気力も実力もない。

こう見てくると今年も明るい展望は無理のようである。年頭から愚痴を並べるのは本意ではないが、これが日本の現実である。


1月5日(木)酒の作法

昨日は仕事始めだった。閑居老人に仕事は関係ないことであるが、「飲み始め」をしないと悪いような気がして夜の街へ出た。と言うのはこじつけで、カウンターに陣取って生ビールとコップ酒を飲みたかっただけである。

行く店は決まっている。先客はおらず一番乗りだった。主(あるじ)と新年の挨拶を交わし、いつも通り生ビールを飲み干すころに、どやどやと同じ職場と思しき7人ばかりの客が入ってきて、カウンターには座りきれずテーブル席に陣取った。仕事始めで職場で飲んだのか、すでにお酒が入っているようである。

なぜそう思ったのかと言うと、入って来た初っ端から賑やかだったからである。行儀が悪いとまでは言わないが大声で話す者もいて、他の客を気にする様子もない。幹事役と思われる人がいたけれども、大声の主は上司なのだろか傍若無人である。

こういう客に居合わせると不愉快である。「酒は静かに飲むべし」と昔から言われている。陰にこもった暗い酒は嫌いだが傍迷惑な酒も困る。若いころ通った酒場の主人は「酒道左千家宗家」と自称するだけに、酒の作法に厳しい人だった。品のない客は容赦なく追い払った。

彼が最も嫌ったのは他人に迷惑を及ぼす行為だった。酒飲みは少なくとも四つの戒めを守れなければ、その資格がないと説いた。「大声歌唱」、「他座献酬」、「席外問答」、「乱酔暴論」の四つである。酒は手酌で時と場所を弁えて心愉しく陶酔すべしと言うのが教えだった。「炉ばた」のおっちゃんこと天江富弥氏のことを懐かしく思い出した。


1月6日(金)言い訳

駆け出し記者のころ、先輩から「手垢のついた言葉は使うな」と教えられた。安易に決まり文句は使うなと言う意味だと察したが「手垢のついた」と言う表現そのものが手垢のついた使い古しの常套句ではないかと反発を覚えた。

文章を書くことは難しい。見えない読者に自分が思っていることを過不足なく伝えることは至難の業と言える。相手が目の前にいれば、その反応を見てこちらの思いがちゃんと伝わっているかどうか、おおよその察しがつく。説明が足りないと思ったら補足すればいい。しかし一方通行の文章はそうは行かない。

文章を綴ることによって食べているプロのようにいかないことは重々承知しているけれども、何年経っても思うような文章が書けないことに我ながら呆れかえっている。夏目漱石のようなプロの文筆家でも、原稿に何度も推敲を重ね書き直しをした痕跡が残っている。血がにじむような努力の結果として読者をうならせる文章が生まれるのだろう。

「閑話365日」は勝手に独り言を言っているだけで、お金を頂戴するわけでもないからお許しいただけると思うけれども、勘違いや調べ不足で誤ったことを書いていることも多いのではないかと危惧している。どうかそのことを念頭に置いて今後もお付き合いいただければ幸いである。


1月7日(土)乾燥野菜

七草粥を食べた。本来ならまな板の上で刻んだ七草を粥に入れるのだろうが、生協の店で乾燥七草を見つけたので今年はそれを試してみた。炊き上げた粥に乾燥七草をパラパラと入れて、3分ほど煮れば出来上がりである。

これは簡便でいい。野菜本来の色や香りもちゃんと残っている。食品の乾燥技術は長足の進歩を遂げている。この技術のお蔭で冬に生野菜の入手が困難な場所でも野菜不足を補えるようになった。加温ハウスが普及して冬でも野菜を育てられるようになる前は、東北地方ではいろいろな工夫をして冬場に備えていた。

その方法の一つに乾燥野菜や漬物があった。その意味では冬が長い東北地方は野菜保存の先進地だったのではなかろうか。春の野で摘んだワラビやゼンマイは塩漬けや茹で干しで保存した。ダイコンも茹でて乾燥したものや芋茎(ずいき)の乾物も冬の食生活を豊かにしてくれた。

冬でも青菜が買いやすくなった今と違って、戦前の雪国は野菜に不自由した。その頃活躍したのが乾燥野菜や漬物であった。戦後間もないころ山形県で塩抜きしたあめ色のセイサイ(野沢菜)漬けを具にした味噌汁を振舞われてびっくりしたことがある。

あのころに比べたら何でもスーパーで売っている現在の料理は楽ちんになった。その一方で昔ながらの保存野菜を使った手間がかかる煮物などの料理は廃れつつある。共働きで料理に費やす時間が取れないのかもしれないが、干し大根とヒジキの煮物のような伝統的料理は絶やしたくないものである。


1月8日()こんにゃく

おでんや煮物に入れたこんにゃくが好物である。栄養価はほとんどないようであるが独特の歯触りと、どんな味つけにも馴染んで自己主張しない独特な食べ物である。売られている形態もさまざまである。平こんにゃく、糸こんにゃく、玉こんにゃく、刺身こんにゃく等々。

インド原産のサトイモ科植物の球茎を加工した食品で、最近までミャンマー、中国、韓国など限られたアジア各国で食べられていたに過ぎなかったが、和食ブームと低カロリー食品として注目されるようになり、欧米諸国にも食べる範囲が広がりつつある。

こんにゃくの成分は96〜97%は水分で、水分以外の主成分はグルコマンナンである。多糖類の一種で人間の消化管ではほとんど消化されないので腹の掃除に役立つと昔から言われている。実際日本にこんにゃくが伝えられたのは古い。欽明天皇の時代(539〜572)に朝鮮半島経由で中国から入って来たといわれている。

導入当初は医薬用に使われていたが、推古天皇時代には食用として中国から直接盛んに輸入されされたと言う。この時代までは国内での生産は行われなかったようだ。栽培されるようになったのは元禄年間になってからである。

大概の食品は原産地から四方に伝播するものだが、こんにゃくは東方にしか広がらなかった。今でもヨーロッパやアメリカ大陸では栽培されていない珍しい植物である。


1月9日(月)アイラン

イスラム教徒は原則としてアルコール飲料を飲まない。トルコを旅した時、外国人が宿泊するホテルや観光地のレストランにはビールが置いてあったが、田舎の食堂にはなかった。現地の人はいったい何を飲んでいるのだろう。

一般的に食事のときに飲まれているのは大きめのグラスに入れられた白い飲み物である。泡立ったものと泡がないものがある。ウエイターに聞くと、それはプレーンヨーグルトを水で薄めて塩味をつけしたものでアイランと呼んでいた。

トルコはヨーグルト発祥の地の一つである。ヨーグルトはトルコ語で撹拌を意味する「ヨウルト」から派生した言葉で、トルコで一般的なヨーグルト製法を反映している。日本で売られているヨーグルトに比べると水分が多く、食べ物と言うよりは飲み物である。作り手によって味も様々で変化に富んでいる。ブルガリア・ヨーグルトも有名であるがブルガリアはかつてオスマントルコの領土だった。

ヨーグルトを使った料理はたくさんあるけれども、日本の家庭ではまだ一般的ではない。様々な味と色づけされた紙カップ入りのヨーグルトをそのまま食べるか、洋風サラダのドレッシングが普通で、煮物の味付けに使われることは少ないのではないか。ヨーグルトは名だたる栄養食品である。もっと大胆に多方面に使ってもいい食品だと思う。ただしヨーグルトの種類によって効果が違うから、目的に応じて製品を選ぶ必要がある。


1月10日(火)ウンシュウミカン

冬の代表的な果物はリンゴとミカン、イチゴだろう。わが家ではミカンがいちばん消費されている。一日に5、6個は食べている。リンゴのように皮をむき芯を取る必要もないしイチゴのように蔕を取る必要もない。手間いらずで、ぐうたら向けの果物と言える。

普通は単にミカンと呼んでいるが学名はウンシュウミカン(温州蜜柑)である。中国の浙江省温州は柑橘類の名産地で、それにちなんで名づけられたが、実はれっきとした国産で中国の温州とは全く関係がない。鹿児島県出水郡長島町あたりがミカンの原産地と推定されている。

わが家で現在食べているのは長崎西海産である。現在の温州蜜柑の主産地は九州ではなくて和歌山県、愛媛県、静岡県にお株を奪われたが、熊本や長崎も頑張っている。生産量は年々変動する。2009年度の統計ではトップは和歌山県で19万トン、全国シェアの19%である。愛媛、静岡を含めると、この3県だけで全国生産量の47%を占めている。

以前にも書いた覚えがあるが、地中海沿岸のトルコ南部を旅行中に日本のミカンそっくりのミカンが「Satsuma」の名前で売られていた。温暖な気候が日本の産地に似ているので栽培されているのだろう。サクランボはトルコの北部・黒海沿岸が原産地で、果物を通じた日本とトルコはご縁が深い。


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