3月上旬の閑話


[TAKESIの部屋] [旬の話題] [仙台方言あそび] [閑話365日]


3月1日(木)赤ちゃんの命の重さ

弱い雨が降り続いている。壊れた雨樋から滴(したた)り落ちる水滴がトタン屋根を叩く音が眠気を誘い、気がついたら7時近くになっていた。「春眠暁を覚えず」と言うが、はっきり目覚めるまでのウツラウツラした時間帯が心地よい。これも勤めをやめてからの余得と言えよう。

どこかで雨宿りしているのか今朝は小鳥も姿を見せない。お腹が空くに違いないから小鳥にとって雨や雪の朝は難儀なことだろう。そういえばカラスの声も聞こえない。鳥に限らず自然界の生き物は生きるために必死なのだ。

動物の世界ならまだしも、人間社会でも貧困国では幼い命が多く失われている。日本では賞味期限切れや飲食店の食べ残しで膨大な量の食べ物が捨てられている。食料を巡るこの世界的格差を何とか縮められないものかと思う。

最近届いたユニセフ(国連児童基金)からの報告書によると、毎年280万人の赤ちゃんが生後ひと月以内に命を落としていると言う。新生児の死亡原因の80%以上は早産や出生時の合併症、肺炎や敗血症などの感染症によるものだが食糧難も見逃せない。

新生児死亡が最も多いパキスタンでは22人に1人が生後28日以内に死んでいる。新生児死亡率が世界中でいちばん低いのは日本である。日本で新生児が死亡するのは1,111人に1人なのだ。新生児死亡率が高い国では助産師や医療従事者不足で母親や新生児が適切なサポートを受けられないでいる。

どこの国で生まれるかによって赤ちゃんの命が左右されるこの現実を知り、援助の手を差し伸べることが富裕国の努めだと思う。


3月2日(金)過疎地

轟々となる風の音とミシミシいう家の揺れで夜中に目が覚めた。風は吹いたり止んだりを繰り返している。今朝になっても雪と強風は止みそうもない。雪は降ると言うよりも舞っていると言った方がいい。気まぐれな風にあおられて横に流されたり舞いあがったりで、なかなか地上に達しない。北海道では猛吹雪になっていると言う。大型トラックが横転したり、乗用車が動けなくなり救援隊が出動する被害が出ている。

仙台では猛吹雪を経験したことはないが、雪国では一冬に何度か経験するのだろう。不要の外出を控え身の安全を優先するように行政や報道機関が注意を促しているけれども、お年寄りなど生活弱者をサポートする体制が整っているとは言い難いようだ。買い物にも行けない独り暮らしの老人はどうしているのだろう。

若者は都会に出ていなくなり田畑や山林と直結した生活をしている老人も減る一方である。一度荒れた田畑や山林を元に戻すのは至難の業だと言う。そんな過疎地に都会から移り住んで地元老人の智慧を借りながら生活を成り立たせようと努力している若い家族もいる。彼らは都会生活では経験できない何かを求めてやって来るのだろう。

慣れない仕事で苦労が多いに違いない。それでも彼らを惹きつけてやまない何かが過疎地にはある。それは助け合いだったり人情だったり、都会では失われてしまった生活の原点みたいなものかもしれない。彼らもやがて老人になる。そうなったときに新たな後継者が来る魅力のあるなしが問題だ。子どもの学校の問題、病気になった時の医療問題など生活を支えるために整備すべき問題が山積している。今の政治は票にならない過疎地には冷た過ぎるような気がしてならない。


3月3日(土)今日と明日休刊


3月5日(月)父の名刺入れ

1年前に亡くなった兄の法要があった。その後の会食の折に、兄の遺品の中から見つかったと、兄を世話していた姪が持ってきて手渡してくれた。それは斑(まだら)に変色した茶色の名刺入れだった。中を検めて見ると小生の父親が持っていたものと分かった。亡くなった兄は次兄だから長兄が物故した折に引き継いだのかもせれない。

父親は県庁の役人をしていたが、小生が物心ついたころは役人を止めて保険の外交員をしていた。自転車で市内を巡り保険加入勧誘に駆けずり回っていたのだろう。その手垢がついた名刺入れには○○火災海上保険会社と印刷された下に手書きで代理店と記されている。

おそらく会社を辞めて独立したばかりで、会社勤め時代に使っていた名刺を活用したものだろう。薄っぺらな粗末な紙に印刷された名刺の他に、血液型検査票がか入っていた。小生はO型であるが父はA型だったことを初めて知った。

それと一緒に面白いものがあった。「潮の満干早見表」である。父は釣り好きだった。この表を参考にしていたのだろう。別のポケットから和紙に包んだ小さなお守り札が出てきた。愛宕神社、青葉神社、大崎八幡神社、鹽竈神社のものである。

薄汚れたこの名刺入れは他人にとっては何の価値もないものであるが、小生にとっては宝物である。武家の血をひいた父は明治19年生まれである。冗談一つ言わず謹厳実直を絵で描いたような父であたが、釣りお供したときは別人のように穏やかな表情だったことを思い出す。


3月6日(火)満88歳

今日は「啓蟄」である。冬ごもりから目覚めた生き物が穴をあけて顔を出す頃と言われる。しかし東北はまだ春浅く地中で冬ごもりしていた生き物は動き出していない。それでも桜の蕾が目に見えて大きくなり春の到来を告げている。

今日は小生の誕生日でもある。満88歳になった。むかしは米寿を迎える人は少なく希少価値があったのであろうが、今では百歳を超える人も珍しくなり、88歳で特別のお祝いをすることもなくなったようである。小生は7人兄弟の末っ子である。二人の姉は小生が生まれる前、幼いうちに亡くなった。残った兄4人と姉1人のうち今は二つ年上の兄と小生だけが生き残っている。何とも寂しい限りであるが致し方ない。その兄も脳梗塞で倒れて入院中で家族が見舞いに訪れても反応を示さないと言う。

小生は年齢の割には元気な方だろう。週に一度は酒を飲みに居酒屋に出かけ、常連さんと話を交わすのを楽しみにしている。いつまで続けられるか分からないが、自力で動けるうちは続けようと思っている。物忘れが多くなったし足腰も衰えてきたと自覚しているが、好奇心だけは未だに健在である。

この世に生を受けたらやがて死ぬ運命にあるわけだが、そのことをあまり気にしたことはない。その時期が迫ったら慌てるのかもしれないけれども、運は天に任せて呑気に暮らした方がいい。今日は街へ飲みに出かける日である。


3月7日(水)春は名のみ

晴れ渡っているのに風が冷たい。雪の山を越して仙台平野に流れ下って来る寒気はなかなか去ろうとしない。「早春賦」と言う歌がある。いちばんの歌詞は「春は名のみの風の寒さや」で始まる。まさにその通りで本格的春の到来が待ち遠しい。歌詞は次のように続く。

谷の鶯 歌は思えど
時にあらずと 声も立てず
時にあらずと 声も立てず

この時期のウグイスはめったに姿を見せないばかりか、餌をさがしに庭木に出て来ているのだろうが、声も立てないから気付くことはない。スズメやエナガのように集団を作ることもないので、なおさら姿を見ることが少ない小鳥である。

和菓子屋にはサクラモチとウグイスモチが並んで春を呼んでいるけれども、サクラが開花しウグイスが鳴きはじめるのは一カ月以上も先のことである。ウグイスは8月末には「ホーホケキョ」と鳴くのをやめる。繁殖期が終わり翌年の春まで長い沈黙の時期に入る。年中「チュンチュン」とうるさいスズメとは大違いである。

落ち葉をほじくって餌をさがしていたツグミの姿が見られなくなった。もうシベリア中部などの繁殖地へと旅立ったのだろうか。


3月8日(木)確定申告

確定申告書の提出期日が迫っている。放っておいてもいいのだが、申告した方が過払いの税金があれば返却されるケースが多いので面倒でも毎年申告している。勤めていたころは会社がすべてやってくれたので面倒がなかったが、本人確認書類、公的年金の源泉徴収票、地震保険の支払額証明書などを用意し、提出書類に添付しなければならない。

これが結構煩わしいのだ。確定申告の時期が近づくと上記の書類が郵送されてくるのだが、始末が悪いのでいざと言うときに引き出しを引っ掻き回して探すことになる。今のところはコンピュータを使って必要書類を何とか作成することができるけれども、認知症にでもなったら無理になるだろう。

そうなったら税務署に出向いて助けを求めればいいのだろうが、出向くことも出来なくなったらどうすればいいのか。税金を払うのはやむを得ないけれども税務署の言いなりになるのは御免だ。近所に税理士がいるので今のうちに聞いておく必要がありさうだ。相談する相手もなく、独りで暮らしている老人などはどう対処しているのだろうか。


3月9日(金)ネーブルオレンジ

ネーブルオレンジの旬である。アメリカからの輸入品が主であるが、夏になるとオーストラリア産や南アフリカ産も入ってくる。アメリカ産が75%をを占め21%のオーストラリア産がこれに次ぐ。原産地はインド・アッサム地方で野生のミカンの変種として生まれた。

ネーブルオレンジはヘタに反対側にてっぱりがあって、その形がヘソ(nevel)に似ているのでそう呼ばれるようになった。中の果肉を包んでいる膜が薄くて柔らかく種もないので食べやすい。また多汁で甘味と酸味のバランスが良く香りも豊かで申し分のない果物である。

ネーブルオレンジを初めて知ったのは1969年に訪れたイスラエルのテルアビブの市場だった。果物屋の店頭に山積みされていて安かったので買った。ホテルに戻って食べたその旨さは未だに忘れられない思い出である。

まだ日本は果物を輸入する余力がなかったのだろう。国内では見かけない果物だった。為替レートが1ドル360円の固定レート時代で、外貨の持ち出しも厳しい制限があったけれども、それでも買えたのだからいかに安かったかが分かる。

ネーブルオレンジはビタミンCが豊富で疲労回復に役立つクエン酸や血圧を抑制するカリウムなども含まれている。またヘスペリジンと言う物質は毛細血管を強くし動脈硬化予防にも役立つと言う。


3月10日(土)ジャイアントパンダ

1年365日すべてが何かの記念日である。中には今日の「砂糖の日」のように語呂合わせやこじつけとと思われるものもあるが、東海道・山陽新幹線全通記念日のように歴史的な記念日もある。1975年(昭和50年)のこの日、「ひかりは西へ」のキャッチフレーズで建設を進めてきた山陽新幹線が、残り区間の岡山駅から博多駅まで開業し山陽新幹線が全線開通した。

全通当時、東京〜博多間の所要時間は6時間56分であった。現在では最も早い「のぞみ」は東京〜博多を4時間46分で結んでいる。待ち時間やアクセスを考えたら飛行機より速い。

明日の記念日に「パンダ発見の日」と言うのがある。1869年(明治2年)のこの日、中国・四川省民家でフランス人神父アルマン・ダヴィドが白と黒のクマの毛皮のようなものを見せられた。彼はジャイアントパンダの毛皮とレプリカ標本をパリの自然史博物館に送った。

研究を進めた同博物館のミレー・エドワードがアイルロボタ・メラノレウカと命名した。白と黒の毛皮に注目した命名だった。ジャイアントパンダは肉食目クマ科の動物である。パンダの名前はネパール語の竹を意味するポンヤに由来すると言われている。食性に注目したものだろう。またネパール語で「手の平」を意味するパンジャが語源だと言う説もある。こちらは手を器用に使うことに注目したのだろう。

仙台市の八木山動物公園にはネコぐらいの大きさのレッサーパンダしかいないのは残念だ。日本にいるジャイアントパンダは全部中国からの借りものだそうだ。


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