4月上旬の閑話


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4月1日()シュークルート

春キャベツがおいしい季節である。全体に結球がふんわりしている。硬く締まった冬キャベツに比べると葉が柔らかく甘みが強い。単体での浅漬けもうまいがキュウリと一緒に漬けた方が彩も良く好きである。ヨーロッパのキャベツ料理の一つに、ザ?ワ−クラウト(ドイツ語)、あるいはシュークルート(フランス語)というものがある。

キャベツの千切りに軽く塩をして重しを乗せ発酵させた物である。味を良くするためにジュニパーやディルシードを入れたり白ワインを加えることも行われる。日本のハクサイ漬けのように各家庭で味が違うらしい。乳酸発酵で軽い酸味が出たころが食べごろである。

そのまま食べてもうまいが、数種類のソーセージやハムなどと一緒に大皿でテーブルに出し、銘々の皿に取り分けて食べるのが普通である。今ごろに季節だったと思うが、フランスとドイツとの国境に近いストラスブールのレストランで食べたアルザス風シュークルートが旨かった。シュークルートの上にソーセージやハムを乗せ蒸し焼きにしたものである。果実味のある白のアルザスワインが良く合った。

シュークラウトはビタミンCを含む保存食として長い航海に伴う壊血病予防にも用いられた。加熱するとビタミンCが破壊されるので生で食べたようである。家庭でも簡単に作れるらしいから試してみようと思っている。


4月2日(月)ワラビの初物

家の東側の雑草の中にワラビが一本出ていた。周囲には去年のワラビの枯葉がたくさんあるので、そのうち次々出てくるだろう。元々山だったところを削って造成した宅地なので、ワラビが生えて来ても不思議ではない。

シドケ(モミジガサ)やアイコ(ミヤマイラクサ)、ミズ(ウワバミソウ)も間もなく芽を出すころである。ワラビ以外は山菜採りに行った山から移植したものである。環境が似ているからか引っ越し先に馴染んで定住した。お蔭で居ながらにして山菜採りができるようになった。

山菜の魅力はその独特の歯ごたえや香りである。ただ残念なのはコゴミ(クサソテツ)が雑草に負けて消滅してしまったことである。半日陰の湿った土地を好む植物なので、環境を整えてやれば栽培は簡単だと思う。葉が美しいから日本庭園の下草にも使われている。大阪・中之島にある「東洋陶磁美術館」の小さな庭にコゴミが植えられているのを発見した時は嬉しかった。


4月3日(火)アリの行列

庭に数種類のアリが出てくる。今年はまだ姿を見せないが冬ごもりから目覚めると芝生のあちらこちらにアリが運びでした砂粒が目立つようになる。一粒一粒口に銜えて巣穴から運びだすのはアリにとっては大変な作業だろう。冬眠中のアリは何も食べていないそうだから空腹だろうに偉いものだ。

庭に頻繁に現れるのはクロヤマアリである。体長5mmほどの光沢がない灰褐色のアリである。明るい乾燥したところを好み攻撃性はない。同じくらいの頻度で見かけるのは体長1cmほどのクロオオアリである。これも攻撃性はない。

人間を襲うアリとして警戒されているのが「ヒアリ」と言う外来種である。熱帯地方に生息するアリだ。コンテナ船などに紛れ込んで日本にも侵入している。今のところ水際駆除によって被害は拡大していないが、非常に攻撃的な性格で日本在来種は太刀打ちできないと考えられている。体長4oほどの赤褐色の小さなアリである。同じ大きさで色も似ている在来種が日本にもいて、専門家でも簡単に見分けがつかないと言うから厄介である。

子どものころアリは良い遊び相手だった。せっせと働くアリの行列を飽かず眺めたものである。あれはグンタイアリと言うのだろう。大きな獲物にも集団で襲い掛かって倒してしまう獰猛さを持っている。顎が大きい働きアリの2倍くらい大きなアリが見張りと護衛を受け持ち、大きな芋虫を食いちぎって持ち去る共同作業が面白かった。


4月4日(水)お花見

百花繚乱とはこのことか。庭の3種類のツバキ、ユスラウメ、キクザキイチゲ、レンテンローズ、スイセン、ヒヤシンス、ムスカリ、ツルニチニチソウなどが美を競い合っている。ご近所のサクラとモクレンも咲きだした。申し合わせたように一斉に咲かなくてもよさそうなものだが、春に花を開く植物の生理現象だからどうしようもない。

サクラの開花は例年より早いと言う。飲み仲間と毎年開いているお花見も今年は早めないといけないかもしれない。毎年訪れる三神峯公園はサクラの種類が多く遅咲きは5月まで楽しめるそうだから、あわてる必要はないのだが、幹事からのお誘いを心待ちにしている。

三神峯公園は駐車場が少ないので、遠くからの花見客は地下鉄とバスを乗り継いで行くしかないせいか、陣取り合戦をするほど込み合うことがないのも魅力の一つである。常設のトイレの他にお花見期間中は簡易トイレも用意される。缶・瓶・ペットボトル・紙くずなどを分別して捨てる大きな容器があるのもうれしい。ゴミをポイ捨てする人がほとんどいない。

地元商店会が運営するテント張りの店があって生ビール、酒、おでん、おつまみなどを売っているから、手ぶらで行っても困らない。仙台には榴ヶ岡、西公園など他にも花見で賑わう場所があるが、小生は三神峯の広々とした芝生の一角でする花見が好きである。


4月5日(木)清明

暖かいのは今日までで明日は寒気が入ってきてぐんと気温が下がると言う。春先は気温の変動が激しく体調管理が難しい。暖かい日が続いて近所のサクラが満開になった。気温が下がれば花が長持ちするのでありがたい。

今日は二十四節季の一つ「清明」である。万物が清々しく明るく美しいころと言う意味である。日本では特別な行事はしないが、中国では先祖の墓参りをし墓地を掃除する日なので「掃墓節」と言い、日本の「お盆」に当たる年中行事が行われる。

この風習は沖縄に18世紀に「シーミー」として伝わっている。親類が集まって墓参し清めた墓前でピクニックのようにご先祖様と賑やかに飲食を共にすると言う。沖縄のお墓は広い敷地(大きいものは百坪)に作られるので可能なのだろう。沖縄では故郷を離れている人がお盆や正月に帰らなくても「シーミー」に帰省する習慣があるそうだ。


4月6日(金)臨時休刊


4月7日(土)ヒトリシズカ

夜のうちに雨が降ったようだ。朝には上がっていたが道路も芝生もしっとり濡れている。茂ったツルニチニチソウの中にヒトリスズカが数輪咲いているのを見つけた。4枚の葉の間から突き出た花穂の先端にブラシ状の白い花をつける千両科の一風変わった花である。

草全体の姿を源義経が愛した「静御前」が一人で舞っている姿に見立てた命名だと言う。静御前は源義経の側室であったが、吉野山で源頼朝に捕らえられ鎌倉に送られる。静御前は義経を慕いながら鎌倉八幡宮で舞を舞った。その寂しげな舞姿を彷彿とさせる草花なのだろう。

ヒトリシズカは「眉掃草」(マユハキソウ)」の別名もある。花の形が女性が眉毛を掃くブラシに似ているからだろう。よく似た草にフタリシズカがある。これも千両科の植物で花穂に米粒のような白い花をつける。花穂は1本から4本まで区々である。フタリシズカはヒトリシズカよりやや遅れて咲く。


4月8日()イカリソウ

イカリソウが咲き始めた。濃いピンクの花が美しい。冬も地上部が枯れないトキワイカリソウも生えている。植えた覚えがないから自然に生えてきたものだ。花の形が船の碇(いかり)に似ているのでそう呼ばれるようになった。半日陰の土地を好むようである。

葉は花が終わる頃から伸びてくる。薬用にするには葉が茂る6月から7月にかけて全草を刈り取って天日干しして細かく刻んで保存する。それが生薬の淫羊霍(いんようかく)である。淫羊霍と言う名前はこの草を食べた羊が精力絶倫になって1日に百回も交尾したと言うことから付けられたと言う。

化学分析の結果、精液分泌を促す配糖体であるエピメジン、イカリイン、マグノフィリンが含まれていることが分かった。乾燥させたイカリソウをホワイトリカーと砂糖で漬け込んで作るイカリソウ酒にも強壮の効き目があると言う。


4月9日(月)ルナリア

植物の話が続くが春は花の季節だからご容赦願いたい。今日取り上げるのは咲きだしたばかりのルナリアである。ヨーロッパ原産のアブラナ科の植物で、直径2cmほどの赤紫や白の花を咲かせる。どなたからか忘れてしまったが種を頂いて育てたものである。

この花はゴウダソウの別名がある。この植物を20世紀初頭にフランスから持ち帰った合田清さんの名前にちなんで名づけられた。花が終わると円形の平たい鞘をつける。薄膜を3枚張り合わせたような鞘の中に茶色の種が数個入っている。完熟すると幕が剥がれて種が散る仕組みになっている。

鞘が緑色から茶色に変わり始めたころ全草を刈り取って陰干しにすると、半透明でキラキラ輝く円形の膜を多数つけたドライフラワーになり数年は楽しめる。トルコ東部のキノコ型奇岩で有名なカッパドキアで、果実がより小さいものを見つけて種を持ち帰ったが、惜しいことにどこかに紛れ込んでしまった。

ルナリアと言う名前はラテン語のルナ(月)から来ている。円形の鞘を月に見立てた命名であろう。日当りが良い場所を好むが半日陰でも育つ。暑さには弱いので西日が当たらないような風通しがいい場所に植えると元気に育つ。

なお合田清氏は明治中期から昭和初年にかけて活躍した木版画家で、東洋美術学校で長い間フランス語の教鞭をとった。


4月10日(火)クロモジ

クロモジの葉が芽生えてきた。新芽はまだ開いていないが葉が展開して間もなく黄緑色の小さな花の集まりを葉腋に付ける。緑色のすべすべした肌の若い枝は古くなると黒っぽい斑紋ができる。クスノキ科の落葉樹で枝は丈夫で折れにくいので高級楊枝に加工される。

皮付きの楊枝自体をクロモジと呼ぶこともあるのはそのためである。折れにくいばかりか爽やかな芳香を発する木である。リナロール、テルピネオールやリモネンなどの匂い成分を含んでいて、かつては化粧品や石鹸の香料に盛んに使われた。現在は高級和菓子に添えられる楊枝に使われる程度で需要は少なくなったようである。

40年以上も前に山菜採りに行った山で採取した小さな苗木を移植したものが今では3mを越すほどに育ったが、花は咲いても実がつかないので雄の木らしい。晩秋には葉が黄色に色づいて美しい。葉と細かく刻んだ小枝を乾燥させたクロモジ茶がある。


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