4月中旬の閑話


[TAKESIの部屋] [旬の話題] [仙台方言あそび] [閑話365日]


4月11日(水)

笹が裏庭にはびこっている。その笹に濃い紫色の蕾らしいものが集まって付いているのを今朝見つけた。今の土地に住んで48年になるが笹が花芽をつけたのを見たのは初めてである。糸状の薄い黄色の花を咲かせるらしい。

笹に花が咲くのは大地震の予兆と言う言い伝えがあるけれども科学的な根拠は全くない。それにしても笹の花は珍しい。120年に一度しか咲かないとも言われるが60年ぐらいで咲くのもあるらしい。しかも花を咲かせた笹は間もなく枯れてしまう。だから天変地異など不吉なことと結びつけて考えられたのかもしれない。

東北地方で笹が広範囲に花をつけた1896年には明治三陸地震が発生し、津波も発生して2万2千人近くの死者・行方不明者を出している。でも笹の開花と自然災害は関係があるとする考えは当たらない。笹や竹の花は種類によって開花周期が違う。平均すると約100年らしい。

と言うことは竹や笹の開花を目撃できるのはラッキーなことだ。笹の実は小麦に匹敵するほど栄養があり米に近い味がすると言う。わが家の笹に実が付くかどうか分からないが、刈り取らずに様子を見ようと思っている。


4月12日(木)日陰のワラビ

花盛りだったツバキが散り始めた。3種類あるが開花時期も散る時期もほとんど同じである。ツバキは花びらがばらばらに散るのではない。付け根からまとまったまま抜け落ちる。大きな花だからドサリと音がするのではないかと思われるほどだ。その有様が刎ねられた首が落ちるようだと、武家では庭木にするのを嫌ったものだと言う話を聞いたことがある。

野生種だと思われるいちばん大きな木は2階の屋根に届くほど大きくなった。常緑樹だから日陰を作り、湿り気を好む植物が周囲に繁茂している。シイタケの榾木(ほだぎ)置き場にも向いている。その周辺にワラビが生える。今朝も10本ほど収穫した。日陰のワラビで長く太い。夫婦二人で食べるには十分である。岩手民謡の「外山節」に出てくるような日陰のワラビである。

水で洗ってサッと重曹を入れた熱湯で茹でると鮮やかな緑になる。水でアクを抜いてから水気を切って刻んで醤油を垂らしてかき回すと、とろろのように粘り気が出る。それを熱々のご飯にかけて食べるのが旨い。今の季節限定の只で手に入るおかずである。

山菜のアイコ(みやまいらくさ)も大きくなってきた。全草に蟻酸を含む刺毛があり手に刺さると痛いので、採取するときは手袋をする。癖がない山菜で味噌汁の具にすることが多い。


4月13日(金)ウグイスカグラ

ウグイスカグラと言う低木が二本生えている。葉が出たばかりなのにラッパ型のピンクの花を咲かせている。5弁の花の大きさは2cm弱で多くは下を向いて垂れさがる。何とも可憐な花である。漢字では鶯神楽と書くが、ちょっと変わった名前である。ウグイスと何か関係があるのだろうか。

定説はないが枝が込み合って伸びるので鶯が身を隠し、枝を渡り歩く様が神楽を踊っているように見えるからだと言う説が有力である。ウグイスが盛んに鳴くころに開花するのでウグイスノキという別名もある。初夏に赤く熟すグミのような実は甘くてうまい。この木は自然に生えてきたものである。小鳥が種を運んで来たのだろう。秋になると葉が紅紫色に色づき美しい。

もう一つ赤い実をつける灌木がある。ビックリグミである。ダイオウグミの別名があるほどグミの仲間では実が大きいので驚いたことからの命名かも知れない。完熟した実は多少渋みを感じるが甘酸っぱくておいしい。ケーキやタルトのトッピングにしても愛らしいと思う。実が熟すのは梅雨時である。実によって完熟する時期がずれるので、ジャムなどを作る場合には熟したものから順次収穫して冷蔵庫で保存して貯め込むのが良いだろう。


4月14日(土)ザイフリボク

庭のアメリカザイフリボクの白い花が満開である。葉が出る前に純白の花を密生して咲かせるので目立つ木である。現在の家に引っ越してきたとき、庭に一木もないのは寂しかろうと思ったのか、近所の爺様が持って来てくれた木だ。当時は幼木であったが今では枝を四方に伸ばし堂々とした庭木になった。

5弁の密集した花はわずかに波打ち、枝先に雪が積もったように見える。葉は花が終わってから展開する。サクランボのように長い柄がある実は初め緑色で、やがて赤くなり完熟すると黒っぽくなる。実が熟す時期が6月なのでジューンベリーの名がある。ほんのり甘い実であるが、完熟を待たずに小鳥がほとんど食べてしまうので人間はおこぼれを頂くだけである。

ザイフリボクという名はむかし戦場で大将が手勢の指揮を取るときに使った「采配」に由来する。采配は細く切った和紙を何枚も束ねて房にして棒の先にくくりつけたものだ。現在でも先頭に立って何かの指図をすることを「采配を振る」と言うように使っている。


,4月15日()チーズ

チーズが好きで良く食べる。トーストに載せて食べるシート状のチーズや加熱処理したチーズではなく、素性のしっかりしたナチュラルチーズが好きである。しかもカマンベールのようなクセが少ないチーズよりは個性が強いチーズを好む。でも専門店と言えども世界各地の名だだる名品を取りそろえている店が少ないのが残念である。

チーズ好きが高じて文芸春秋社編の「チーズ図鑑」と言う本を買ってきた。写真入りで産地と原料、特徴などを解説した本で435種類が収録されている。仙台にそれだけのナチュラルチーズを常時置いてある店はないし、おいしい食べ方を指南してくれる店員もいない。個性派ぞろいのナチュラルチーズだから、食べ方を指南してくれる人がいると助かるにだが。

スイスを旅した時にチーズフォンデュに初めて出会った。今から25年ほど前のことである。刻んだグリエールチーズとエメンタールチーズを深鍋に入れて溶かし、一口大に切ったバゲットを串刺しにして、とろけたチーズをつけて食べる郷土料理である。チーズを常食している土地だから気軽にできるのだろうが、日本では合わせるワインのことも考えると高くつく料理である。


4月16日(月)臨時休刊


4月17日(火)父の命日

今日は父親の命日である。謹厳実直を絵に描いたような人で酒もたばこも嗜まず唯一の楽しみは釣りだった。不肖の息子は酒は浴びるほど飲みタバコも吸った。今はタバコを止め酒も1合ぐらいでいい気分に酔うようになった。

父親が生まれたのは明治19年だから日清・日露戦争には年少のため従軍せず、太平洋戦争には今度は歳を取り過ぎて召集されなかった。壮年期は県庁の役人だったせいか、兵役に就いたことは一度もなかったのではないか。父親から軍隊生活の話を聞いたことがない。

長男は通信関係の軍属としてフィリピンに渡り現地で終戦を迎え、米軍の捕虜となって昭和21年に帰国した。仙台駅に名前を書いた布を持った父と迎えに行ったのを今も覚えている。小生は16歳の少年だった。次兄も召集されたが外地には赴かず、戦争で命を落とした者がわが家から一人も出なかったことは幸いであった。

父親の命日とは何の関係もないが、江戸幕府250年の基礎を築いた徳川家康が大往生を遂げたのも1616年の今日だった。


4月18日(水)芽吹きの季節

落葉樹の芽吹きが美しい。樹木の種類によって葉の色が違う。ご近所のアカメガシの新芽は燃えるような赤である。大概の木の新芽は緑色であるが色の濃淡、色合いに微妙な差がある。そして葉が展開してからも刻々と色合いが変化する。

庭のコナラも芽吹き始めた。冬に芽を保護していた茶色い殻を脱ぎ捨てて、枝先が一斉に薄緑色に変わった。産毛が生えていて光の具合で銀色に輝いて見えることがある。わが家の近所にはないが日本で唯一の落葉針葉樹であるカラマツの芽生えも美しい。山菜採りに通った山の山麓に見事はカラマツ林があった。山菜シーズンがカラマツの芽吹きと重なって毎年惚れ惚れするような新緑を楽しんだものである。

仙台市内の街路樹に多用されているイチョウも可愛い葉を出し始めた、小さいながらもちゃんとイチョウ型の葉の形をしている。葉の形がアヒルの足に似ているので中国では鴨脚(イアチャオ)と呼ばれている。それが日本に輸入されてイチョウの名が生まれたと言う説があるが定かではない。

イチョウの原産地・自生地は確認されていない。剪定に強く黄葉が美しいので街路樹として利用されることが多い。日本では約57万本のイチョウが街路樹として植栽されているとみられ、樹種別ではもっとも多い。ただし秋に完熟して落ちるギンナンが異臭を放つので、近年は雄の木だけを植えることが多くなった。


4月19日(木)ツツジ

,ヤマツツジが咲きだした。20年ほど前近所で宅地開発が始まった時、そこにたくさん生えていたヤマツツジがブルドーザーに無残に踏みにじられるのを目の当たりにして数株庭に移植した。それが毎年赤い花を咲かせる。園芸種のような変化はないけれども朱色の花は素朴で美しい。

枝も自然の成り行きに任せてあるので樹形は悪いが、もともと人手を加えられずに育った木だからそれでいいのだと思う。自然に山に育つツツジは土地によって種類が違う。関西ではコバノミツバツツジが主流であった。花は明るい紅紫色で直径3cmほど。西宮に住んでいた時分、近所の広田神社境内に大株のコバノミツバツツジがあり天然記念物になっていた。九州ではキリシマツツジやクルメツツジが有名である。

日本はツツジ大国であるが中国原産のタイワンヤマツツジがヨーロッパに持ち込まれ、改良されてアザレアの名で日本にも入ってきている。わが家には橙色の花をつけるレンゲツツジも植えてあるが、グラヤノトキシンなど痙攣性毒素を含んでいるので要注意である。


4月20日(金)イタドリ

庭に今年もスカンポが出てきた。イタドリが式名称らしいが、子どものころからスカンポと呼んでいた。碌におやつもない時代に育ったから野の草も摘んで食べた。桑の実で口の周りを紫に染めたこともあった。キイチゴの味も懐かしい。

スカンポの新芽は適度な酸味があって茹でてアク抜きしてから酢の物、マヨネーズ和えなどにするとうまい。タデ科の多年草で日本、台湾、朝鮮半島、中国に分布する。子どものころイタドリ水車を作って遊んだ。成長したイタドリの茎を切り取り茎の両端に切り込みを入れて水に浸しておくと外側に反り返る。中空の茎に真っすぐな木の枝を差し込んで小川で水車にして遊んだ。

ちゃんとしたおもちゃが無くても年上の子どもが遊び道具の作り方を教えてくれた。クマザサの葉で笹舟を作ったり、フキの葉で水飲みコップをこさえたりした。戦時中タバコが不足した時に乾燥したイタドリの葉を混ぜて増量したことがあった。インドや東南アジアでは今でもイタドリの葉で葉巻を作っていると言う。

地上部が枯れたころ合いに根茎を掘り起こし洗って天日乾燥させたものは虎杖根(こじょうこん)と言い、緩下剤、利尿などの民間薬として用いられている、若葉は揉んで汁を擦り傷などにつけると痛みが和らぐ。痛みを取るのでイタドリの名が生まれたと言う。


inserted by FC2 system