わらし
わらし わらわら どごさいぐ ようすいぼりさ ざことりに わらし わらわら はせでいぐ おらいさんだぞ それにげろ わらし わらわら かやのなか へそばおさえて なんまいだ |
子供ら急いで どこへ行く 用水堀へ 雑魚とりに 子供ら急いで 駆けて行く 雷様だぞ それにげろ 子供ら急いで 蚊帳の中 へそを押さえて 南無阿弥陀仏 |
「わらし」は仙台弁で小児のことです。「わらしこ」と もいいました。童衆から転化したものでしょうか。 「わらわら」は急いで駆け出す様子、ばらばら、散り乱 れた様などを現す副詞です。「おらいさん」は「おらい さま」ともいい、御雷様のこと。むかしはいろいろな自 然現象に畏敬の念を持っていたから、雷も尊称を付けて いいました。蚊帳(かや)といっても現物を見たことが ない人が多くなりましたが、寝室に吊るす蚊を防ぐ網で す。この中に入ってへそを取られないように押さえてい ると雷に打たれないといわれていました。 |
戦前は子沢山の家庭が多く、どこも子供であふれかえっていました。今のよう に熟通いや勉強を強いられることもなく、「わらし」はのびのびと遊んだもので す。「雑魚とり」は楽しい思い出です。田植えが近づくと、田んぼに水を引く用 水堀の掃除と補修をするために、水を塞き止める時期があります。その時が雑魚 とりの絶好のチャンスでした。手に手に網や笊(ざる)を持って用水堀へ走りま す。大人に作業の邪魔だと追い払われながら、泥んこになって魚を追いまわして は、フナやコイ、ウナギ、ときには石亀も捕まえました。いまは多くの用水堀が コンクリートの護岸で固められて、小川のせせらぎが消えてしまいました。